ステーキやハンバーグ・すき焼きに焼肉など肉汁があふれるほど熱々に調理されたお肉は間違いなく美味しいことでしょう。たまには新鮮なお肉の味と食感をそのまま味わってみたい!そういったときピッタリのメニューが「ユッケ」です。
しかし馬刺し自体これまで一度も食べたことがないという方は多いことでしょう。ほかの肉との違いや味はどういったものなのか・どうして生で食べられるのかなど、なじみが薄いだけに気になることは多くあるかもしれません。今回はユッケを食べたいときに馬刺しが最もオススメである理由と安全においしく食べるための方法についてご紹介していきましょう。
馬刺しユッケの基本情報
馬刺しは鮮やかな赤身肉とツヤツヤ輝く卵黄を盛りあわせたビジュアルが食欲をそそり、さらに濃厚なタレをかけることで肉本来のおいしさを目と舌で楽しめます。多くの肉好きを惹きつけてやまない料理ですが「肉を生のまま食べるのは少し不安」という方もいるでしょう。そういった方にはぜひ「馬刺しユッケ」をおすすめします。以下からは馬刺しユッケの基本情報について詳しく解説していきましょう。
馬刺しを使った「桜ユッケ」とは?
馬肉の別称が「桜肉」であることから、馬刺しを使ったユッケは「桜ユッケ」とも呼ばれます。食用馬の名産地である熊本県などでは定番の料理ですがほかの地域では食べる機会が非常に少なくなじみがないという方も多いことでしょう。
しかし馬肉は食べやすいと評判でありとくに同じくユッケによく使われる他の肉(牛肉)と比べると臭みやクセが少ないといわれています。馬刺しは脂身が少なくあっさりと食べられるためユッケがはじめてという方にもおすすめの一品です。
桜ユッケには馬刺しのなかでもやわらかい食感と濃厚な味わいが特徴の部位である「モモ肉」を使うことが多いです。とくに黒毛和牛などにもみられることで有名な「霜降り(サシ)」が細かく入っているものはより高級で上質な証となります。とろけるような絶品の口当たりとコクのある甘みを堪能できるでしょう。
馬刺しユッケの食べ方は?
ユッケを食べるときはおいしいタレが欠かせませんがあっさりとした口当たりの馬刺しにはコチュジャンや味噌などの甘辛い調味料が定番となっています。また醤油にショウガとニンニクをあわせたシンプルな味付けも人気です。馬刺しの本場・熊本ではよく使われるタレであり上品な甘みの馬肉と醤油の相性がバツグンで肉のうま味がより引き立ちます。
さらに玉ネギなどの薬味と一緒に食べると馬肉のトロリとした舌触りと野菜のシャキシャキした食感の違いを楽しめます。馬刺しは多様な調味料と薬味にあうため組み合わせ自由にお好みの食べ方をみつけてください。
馬刺しユッケはどこで食べられる?
ユッケをはじめ馬刺しは焼肉店や居酒屋・レストランなどでの提供を問題なく認められています。またお店や通販で購入して自宅で食べられます。
馬刺しには1998年に厚生労働省が定めた「生食用食肉の衛生基準」があるのです。これは日本のお店が馬刺しを安全に提供するためのルールであり、加工・調理するときに必要な設備や作業手順・衛生管理の方法などが厳しく決められています。この基準を満たし、保健所から許可を受けているお店のみが正式に馬刺しを販売できるのです。
最近は生肉の人気が高くなってきたこともあり馬刺しユッケも以前より広く知られるようになりました。しかし食用馬は東北や九州の一部地域以外ではほとんど飼育されておらず残念ながら馬刺しを提供している焼肉屋・飲食店は全国 的にみると少ないことが現状です。
馬刺しユッケを食べたくても店舗が近くにないという場合は馬肉加工施設から通販で購入する方法がおすすめです。業務スーパーで販売されていることもあるようですがやはり馬の産地や飼育方法・加工や流通方法などの詳細がはっきりわかる、馬肉専門店で購入することが一番安心できるでしょう。
ユッケを食べるときに馬刺しがおすすめである理由
次に馬刺しの特徴とユッケを食べるときにおすすめする理由をほかの生肉と比較しながらご紹介していきましょう。
安全性が高い
馬はその性質上、食中毒の主な原因となる細菌が少ないことが言えます。ほかの家畜より体温が高く平熱でも40℃近くあるため熱に弱い細菌は馬の体内では生きられないのです。実際に厚生労働省が2011年に発表した「生食用食肉の危害評価」によると10年間でおおよそ690頭の馬を検査した結果保菌していたのはたった2頭のみでした。
さらに同じく厚生労働省が行った別の調査では、以下のような結果が報告されています。
・原因別で見る食中毒の患者数(2004~2013年)
細菌 | ウイルス | 寄生虫 | |
牛 | 1,221人 | 61人 | 0人 |
豚 | 72人 | 0人 | 0人 |
鶏 | 2,748人 | 27人 | 0人 |
馬 | 0人 | 0人 | 20人 |
出展:食肉等の生食による畜種別食中毒発生状況(平成 16 年~25 年)
馬肉はもともと保菌の可能性が非常に低いことに加え上記の衛生基準によって殺菌の方法が決まっているため細菌による食中毒のリスクは実質ゼロであるといえます。食中毒の危険性が昔から高かった牛刺しや鳥刺しなどは2012年に食品衛生が一部改定されて以降使える部位などに規制ができました。
一方馬刺しは安全性の高さを国が認めていることから現在まで規制がありません。なお豚による食中毒感染例が少ないのはもともと豚の肉・レバーの生食が禁止されているためです。
ただし表にあるとおり馬刺しにとって唯一問題となるのが馬の筋肉に存在する可能性がある「サルコシスティス・フェアリー」という寄生虫です。もちろんこの寄生虫についても確実な対策がみつかっており肉を-20℃で48時間以上冷凍すれば死滅することが確認されています。
アレルギーが起こりにくい
馬肉はアレルギー性が非常に低い食材です。多くの食品はアレルギーの起こりやすさを1~5のレベルで表した「抗原度」によって数値化しています。この抗原度で牛や豚・鶏が最大の5であるのに対して馬はなんと2です。一般的な食肉のなかでは最も低い数値を誇ります。
ほかの肉にアレルギーがある方でも食べられるだけでなく食物アレルギーは大人になってから突然起こる可能性もあるため今はアレルギーの心配がないという方も安心して食べられることでしょう。
栄養価が高い
馬は肉のなかでもとくに低カロリー・高タンパクです。ヘルシー食材の代表格である鶏ムネ肉よりも脂肪分が少なくタンパク質も豊富となっています。健康や美容に効果的として近年人気が高まっています。さらに多くの人が不足しがちな鉄分やカルシウム・疲労回復効果が期待できるうま味成分のグリコーゲンなどが多いことも特徴です。
以上のように馬刺しはユッケ最大の問題である食中毒のリスクが限りなく少ないうえに栄養面でも優れています。安心しておいしくユッケを食べたいならぜひとも馬刺しを選んでみましょう。
ユッケを安全に食べるときに気をつけたいこと
以上のように安全性が高いとされる馬刺しですが、あくまで生。刺身なのを忘れてはいけません。食中毒を確実にふせぐにはお店が衛生管理を徹底するだけでなく、食べる側も意識しなければなりません。とくに自宅で取り寄せて食べる場合は、以下の5つのポイントに注意してください。
正しい方法で解凍する
食中毒を確実に予防するため馬刺しは冷凍で流通することが義務となっています。ユッケを食べるときはまずパックのまま10分間ほど氷をたっぷり入れた水に浸けて解凍しましょう。もし電子レンジを使って解凍してしまうと肉の温度が急激に上がることによってせっかくの風味が悪くなってしまいます。さらに形がくずれたり変色したりと見た目のおいしさに影響するおそれもあるのです。
馬刺しは冷凍することで安全性を確保しているだけでなく肉の新鮮さとうま味をしっかり閉じこめています。少しだけ時間と手間はかかりますが適切な方法で解凍することが馬刺しユッケをおいしく食べるためにたいへん重要なポイントです。
調理したらすぐに食べる
適切な温度で保存されていた肉であっても常温で置いている時間が長ければ雑菌が繁殖してしまいます。解凍してお皿に盛り付けた後タレを絡めたら早めに食べるようにしてください。少しでも新鮮である方がより安全ですし、なによりおいしいものです。
一度に食べきれるだけの量を調理する
解凍したユッケはその日のうちに食べきることが基本です。冷凍していた肉は一度解凍してしまうと鮮度も味も格段に落ちてしまいます。もし残ってしまったときは火を通してから冷蔵庫もしくは冷凍庫で保存しなるべく早いうちに食べるようにしましょう。なお馬刺しユッケは少量をパックした個包装の状態で通販されていることが多いため一人前ずつにわけると食べやすく衛生的にも安心できるでしょう。
消毒を徹底する
二次汚染をふせぐために器具や手指は調理前後にしっかり消毒することが大切です。きちんと加工・保存されていた肉でも新たに雑菌がつけば食中毒の原因になりかねません。食べる前には手をよく洗い、使った調理器具や食器は汚れをきれいに落として消毒しましょう。
体力が低くなっている方は避ける
子どもや高齢者など抵抗力が低い方は食中毒感染の可能性がとくに高いため食べないよう国からも注意喚起されています。またとくに持病がない健康な成人であってもちょっと体調が悪いときや妊娠されているときは控えた方が無難です。
まとめ
馬刺しは長年にわたって食中毒発生の報告がわずかであり最も安心な生肉といえるでしょう。ユッケを食べたいときにはまさにピッタリです。安全性をより確実なものとするためにお店は国の定めた衛生基準にもとづいて加工・調理すること適切な温度と時間を守って冷凍することを徹底しています。
とくに通販などで購入して自宅で食べるときは生食用馬肉のガイドラインに従っていることを明記するなど品質・安全性をきちんと証明しているお店を選ぶことが大切です。今まで馬肉を食べたことがない方でも一度馬刺しユッケを食べたら濃厚なうま味ととろける脂・食べやすさに思わずうなってしまうことでしょう。安全性が保証されていてさらに栄養価も高い馬刺しのユッケを、ぜひとも試してみてください。