2021年現在、安全性への懸念から牛レバーの生食が禁止されてから10年が経ちました。生肉好きの人たちには残念な措置でしたが食の安全が確保されている馬の生肉である馬刺しは、今も安全に食べることができます。馬のレバーを生で食する馬レバ刺しも同様です。
この馬刺しや馬レバ刺しは低カロリーでありながら栄養価が高いことから、最近健康志向の強い方達を中心に注目を集めるようになっています。事実馬肉は牛肉や豚肉など一般的によく食べられる肉と比較してもカロリー・脂肪やコレステロールが低く、タンパク質が豊富である特徴をもっています。
そこで今回の記事では馬レバ刺しに注目しその美味しさの秘訣や安全性を説明しましょう。その上で美味しい食べ方や自宅で食べるための馬レバ刺しの入手方法などについてご紹介します。
馬レバ刺しの美味しさの秘訣
馬刺しといえば、熊本県を含む一部の地域が産地となっている、貴重な食材です。そのはじまりは肥後熊本藩の初代藩主であった加藤清正公が戦で傷つき倒れた馬の肉を食したことにあるといわれています。それはともに命をかけて戦った馬の命を最後まで大切にする思いの表れでもあるといえるでしょう。
このような馬への愛情が根底にありますので食用の馬はとても大切に育てられています。産地である熊本や福島は海と山といった自然に恵まれていることも、馬肉がおいしくなる秘訣であるといえます。
この馬肉のなかでも、レバーである肝臓はひとつしかない部位で、しかも一頭から500~600g程度しか取れない貴重なものです。レバーは動物の体内において栄養分の貯蔵庫でもあるので動物が生きていくために必要となるあらゆる栄養素が含まれています。それをできる限り生に近い形でいただくレバ刺しは動物の肉の旨味が詰まったところであるといえます。
馬レバ刺しは、味と食感の両方からみて魅力のある食べ物です。濃厚でこってりとしていしますが、それでいてくさみや脂味が少ないために、さっぱりとした味がします。このさっぱりした味わいは馬肉の脂が牛肉や豚肉の脂よりも、魚に似た種類の脂であることが影響しているのです。また噛んだときはぷりっとした歯切れよい食感がしますがひとたび口のなかに入ると、まろやかにとけていくやわらかさももち合わせています。
この独特の味と食感のおかげで馬レバ刺しは一度食べたら忘れられない食材として、多くの馬刺しファンを魅了しているのです。
レバ刺しは食べられないのに、馬レバ刺しは安全に食べられる理由
魅力的な味の馬レバ刺しですが、安全に食べられるのか心配になる方もおられるでしょう。
結論から申し上げると、馬レバ刺しは安全に食べられます。むしろレバ刺しのなかで唯一安全に食べることができるといえます。
もう10年も前のことになりますが、とある焼肉チェーン店で提供された牛肉のユッケを食べた人たちのなかで食中毒が発生しました。なかでも腸管出血性大腸菌であるO111による食中毒の結果、亡くなる人が出たのです。
それまでも同じ腸管出血性大腸菌であるO111・O157、そのほかの食中毒の原因菌による食中毒は発生しており牛肉の生肉やレバーが原因として挙げられていました。このような背景があり、2012年以降は牛レバー、2015年以降は豚肉の生食が禁止されてしまいました。
しかし馬のレバ刺しは禁止食品の対象とはなりませんでした。それは馬肉が食中毒のリスクが低く安全であると判断されたからです。
その理由はいくつかありますが、まず馬は37~38度と30度前半である他の食肉用動物に比べて体温が高いため、食中毒の原因となる病原菌が生息できないことがあります。つまり病原菌を保菌していない特徴があるため、食中毒の原因となりにくいわけです。
その上通常市販されたり店舗で提供されたりする馬刺しや馬レバ刺しは、食肉用の処理をする過程で生食用食肉の衛生ガイドラインをしっかりと守り衛生管理を徹底していることがあります。処理過程で処理をする人や調理器具から病原菌がうつることがないように、肉の管理方法や調理器具の消毒などが決められています。
この安全基準をクリアしたものしか提供されませんので、安全は確保されているといえるでしょう。
ただし馬に生息する寄生虫がいることはわかっています。ザルコシスティス・フェアリーと呼ばれる寄生虫ですが、犬と馬に寄生することが知られています。しかし寄生虫は宿主特異性という性質をもっており人間の体内で生息する寄生虫は他の動物のなかでは生息しませんし、この犬と馬の体内で生息する寄生虫は、人間の体内では生きることができません。
ただ大量にザルコシスティス・フェアリーが寄生する馬肉を食べると下痢や軽い嘔吐などの症状を起こしてしまうのです。そこで事前に馬肉に冷凍処理が施すことが義務づけられています。通常マイナス20度で48時間以上馬肉を冷凍すればザルコシスティス・フェアリーは死滅します。この過程を経ることでザルコシスティス・フェアリーによる食中毒は極めてまれなものです。
以上から馬レバ刺しがとても安全な食べ物であることがわかっていただけたのではないでしょうか?あとは自宅で食べるとき通販で購入したものであれば解凍したらできる限り解凍した当日に食べ切ること、食べきれないときには残った分を加熱して調理しておくことで安全を維持することができるでしょう。
馬レバ刺しの美味しい食べ方
安全基準をクリアしたレアな馬レバ刺しですがその味をじっくりと味わって食べる方法をいくつかご紹介します。
馬レバ刺しを食べるときは、主にタレか塩が使われることが一般的です。
ひとつは九州地方で昔から愛用されている「甘口醤油をベースにしたタレ」です。九州地方の醤油は塩分が控えめになっており、その分甘味が少し前面にでた味がします。この甘口醤油に馬レバ刺しをつけて食べると甘口醤油のほのかな甘みと馬レバ刺しのまろやかな味わいが混ざり合うことで、馬レバ刺しの味をより濃厚に感じられます。
もうひとつの食べ方は「ごま油と塩」につけることです。塩はできれば岩塩を利用します。ごまの風味に深みのある塩味を加えることで馬レバ刺しの味を引き立たせてくれるので、よりしっかりと馬レバ刺しを味わえるようになります。またごま油が馬レバ刺しの表面を覆ってくれるのでいつもと違った馬レバ刺しの食感を楽しめるでしょう。
この他、薬味も加えて食べることが一般的です。すり下ろしたにんにくやしょうが、刻んだねぎ、わさび、シソの葉や玉ねぎのスライスなど、好みに応じて組み合わせます。レモン汁をかけてもよいでしょう。
なお自宅で馬レバ刺しを食べるときは食べる少し前まで冷凍庫で保存しておきます。おいしく解凍するコツはゆっくりと解凍することで冷蔵庫に移して解凍する、あるいは1〜2時間ほど氷水につけて解凍するとよいでしょう。
自宅でも馬レバ刺しを食べたい人のための、馬レバ刺しの入手方法
飲食店で食べる馬レバ刺しを自宅でも食べてみたいと思う方がおられるかもしれません。でもどのようにしたら自宅で食べる馬レバ刺しを手に入れられるのでしょうか?
ひとつは馬肉を扱うお店で購入することです。本場の熊本ではスーパーや精肉店で馬レバ刺しを売っていますので比較的容易に購入することができます。
しかし熊本以外の地域では、その他の馬肉の産地である福島県や青森県などでなければ地元に馬肉を扱うお店が存在しないことが一般的です。したがって簡単に馬レバ刺しを手に入れることはできません。そこで頼りになるのがインターネットから通販で馬レバ刺しを購入することです。
ネットで検索すると馬レバ刺しを販売しているお店を見つけることができます。ネット通販で馬レバ刺しを購入する場合は馬肉専門店から購入することをおすすめします。インターネット上では多くのお店で馬レバ刺しを扱っているようにみえますが食品の安全管理、馬レバ刺し以外の商品の種類の豊富さなどの観点から馬肉専門店から購入することが理想です。
またできる限り、購入前にはネット上の情報を確認し、そのお店の安全への取り組みなどがわかるお店を選ぶのも一案です。そのようなお店は生産者の顔が見えますので安心できるのではないでしょうか。
自宅での馬レバ刺しの保存方法
購入した馬レバ刺しは、基本的に指定された保存期間内に食べきりましょう。冷凍された状態であれば通常は数ヵ月以内保存できますが、解凍された馬レバ刺しはその日のうちに食べてしまうか加熱して調理する必要があります。
馬レバ刺しをネット通販で購入すると通常は真空パックで冷凍された状態で届けられます。馬レバ刺しはとてもデリケートですので保存するときは冷凍庫のなかでも外気に触れにくい場所に入れておくとよいでしょう。そうすることで冷凍庫の開閉による温度変化の影響を受けにくくなります。
なお一度解凍した馬レバ刺しは、安全性を維持するためにも再冷凍してはいけません。解凍したらその日のうちに食べてしまうか残った馬レバ刺しは加熱して調理してしまうことをおすすめします。
まとめ
馬レバ刺しの美味しさの秘訣や美味しい食べ方、また馬刺しに関する安全管理の状況について詳しくご紹介しました。
安全で美味しいだけでなく健康面から魅力的な馬レバ刺しは、国内で安全に食べられる生食のお肉です。まだ食べたことがないけど興味を持たれた方はぜひ一度食べてみてください。きっと病みつきになって、また食べたくなることでしょう。