以前は居酒屋や焼肉屋で一般的に提供されてきたレバ刺しやユッケなどの生肉ですが、現在は生で食べるお肉の提供は禁止されています。いつからどのような経緯で肉の生食が禁止されるようになったのでしょうか。レバ刺しが禁止になった経緯や安全性について解説します。
また火を通したレバーよりも臭みが少なくプルプルとした食感を楽しめるレバ刺しはファンが多い料理です。そこでレバ刺しの代わりとして安全に食べることができる馬肉について紹介します。
レバ刺しとは
レバ刺しとはレバー(肝臓)を刺身として生で食べる料理のことです。肉や魚のレバーが刺身で食べられますが一般的にレバ刺しと言えば牛肉のレバーを指します。
レバーは加熱すると、独特の臭みが強くなり食感がパサパサで苦手と感じる人が多いです。しかし生の新鮮なレバーは臭みがほとんどなくプリプリとした食感と甘みがあります。加熱したレバーは嫌いだけど生のレバーであれば食べられるという人もいるくらいです。
レバーの栄養素
レバーは鉄分を多く含む食材として有名で貧血対策で食べる方も多いかと思います。高タンパク質で低脂質のためダイエットや筋トレをしている時にもおすすめの食材です。さらにビタミンやミネラルが豊富で暗い場所での視力の維持や皮膚の健康に関わるビタミンAが多く含まれています。ビタミンAは体内に吸収されるときに「β-カロテン」に変わり、抗酸化作用があります。
美味しくて栄養価が高いレバーですが食べすぎは禁物です。痛風の原因となるプリン体が多く含まれているため尿酸値が高い人は控えた方が良いです。またビタミンAは摂取する必要がありますが過剰に摂取すると短期的には腹痛・嘔吐・めまい、長期的には頭痛や関節痛などの中毒症状が起きる可能性があります。
※レバー全体の傾向であり馬肉のみを指すものではございません。
レバ刺しが最初に食べられたのは?
レバーを始めとした内臓は基本的には食べられずに捨てられ「放るもん=ホルモン」と名付けられたと言われています。また戦時中の食糧難の時期に食用肉の代用品として食べられ始めたという説があります。最初は火を通して食べていましたが在日韓国人や朝鮮人が刺身好きな日本人ならとレバ刺しやユッケのような生で肉を食べる商品を販売し始めたとされています。
海外ではレバ刺しが食べられている?
英語でレバ刺しのことを「raw lever(生のレバー)」や「lever sashimi」と表現されます。
「raw lever」は血が滴り落ちるような内臓を丸かじりしているイメージがあるようです。一方「sashimi」として日本語の刺身が海外でも通用するくらいメジャーな食べ物になっています。よって「sashimi」が通じるのであれば、「lever sashimi」という表現が妥当でしょう。
レバ刺しが実際に食べられているのは韓国です。韓国語でレバ刺しは생간(センガン)と表現します。韓国でも有名なのが広蔵市場(クァンジャンシジャン)の中にある通りでユッケやレバ刺しを売る屋台が並んでいます。ユッケやレバ刺しを食べにくる日本人観光客に人気でユッケ通りやユッケ横丁などと呼ばれています。韓国では生肉を食べることは禁止されていないため多くの飲食店で販売されています。肉が新鮮なため食べ終わった後の皿にドリップがないほどで梨の千切りと一緒に食べられることもあります。
レバーを生で食べる国がほとんどないため日本のように法律で禁止されている国は少ないです。そのためタイやオーストラリアの日本料理や韓国料理を出す店ではレバ刺しやユッケなどの生肉を提供している店もあるようです。
レバ刺しはなぜ禁止されているの?
美味しい生のレバーですが2021年時点では生でレバーを食べることが禁止されています。以前はレバ刺しが食べられていたのになぜ禁止されるようになったのか、
経緯や危険性について紹介します。
レバ刺しが禁止になった経緯
2011年4月に富山県の焼肉屋で死者5名を出す食中毒事件が起きました。軽症者を含めた被害者は180人以上でほとんどの人がユッケなどの生肉を食べていました。店の衛生管理だけでなく肉の卸業者でレバーを切った包丁で生食用の牛肉の加工をしていたと言われています。
この事件を受けてレバーの細菌検査を徹底して行った結果、レバーの内部にも腸管出血性大腸菌O111(O157)が検出されました。検査以前はレバーの外側にのみ大腸菌が付着していると考えられ外側をきちんと処理をしていれば問題ないとされていました。
2011年の食中毒事件と細菌検査の結果を受けて、2012年7月より牛の生レバーを食べることを禁止した「食品衛生法」が定められました。
レバ刺しを食べたら法律違反?
2012年に生でレバーを食べてはいけないという法律ができましたがどのような時に法律違反とされるのでしょうか。実は牛肉のレバーを提供する飲食店を取り締まる法律なのでレバ刺しを実際に食べる客側は逮捕されることはありません。
法律で禁止されても愛好家が絶えないレバ刺しは人気のため、2018年に京都府の居酒屋が「あかんやつ」という名前で提供するなど数件レバ刺しを提供している店舗が存在していました。警察が情報を聞きつけ内偵し居酒屋の経営者は逮捕されました。食品衛生法は衛生上危険な生のレバーを提供することは禁止していますが自ら食べること自体は禁止されていません。
レバ刺しを食べる危険性
食べること自体は禁止されていませんがレバ刺しを食べる危険性は高いです。レバ刺しを食べると「腸管出血性大腸菌(O157)」の危険性があります。O157はわずか2個でも病気を引き起こすほど危険な細菌です。O157に感染すると10~15%の確率で溶血性尿毒症症候群を発症します。溶血性尿毒性症候群にかかると血小板が壊れて出血が止まらなくなったり血便が出たり最悪の場合脳にまで達して意識障害を起こしたりします。
牛肉のレバーにO157が付いているのかという検査方法は確立しておらず洗浄や殺菌する確実な方法がないためレバ刺しを食べてO157を完全に防ぐことはできません。また牛肉だけでなく豚肉のレバーにもO157が付着していますので豚肉のレバ刺しも禁止されています。
豚肉や鶏肉の場合は?
豚肉は牛肉と同様にレバーなどの内臓だけでなく肉全体の生食が危険です。厚生労働省のHPにも禁止としている文言があり、十分に加熱してから食べる必要があります。
一方、鶏肉は厳密には禁止されているわけではありませんが鶏の腸管に存在するカンピロバクターという細菌による食中毒を引き起こす可能性があります。厚生労働科学研究食品安全確保研究事業の実験によれば鶏肉の約3分の2はカンピロバクターに汚染されているという結果が出ています。そして新鮮な鶏肉ほどカンピロバクターが付着しやすいため新鮮さを売りにして生で食べられると販売されているものには注意が必要です。
鹿児島県では鶏肉の表面を炙った「鶏のたたき」という郷土料理がありスーパーには鶏刺しが一般的に販売されているほど鶏肉の生食文化が根付いています。2000年には鹿児島県独自の生食用鶏肉ガイドラインが制定されましたが、2018年に肝臓と砂ずり部分の生食に関しては禁止されました。鶏の腸管に存在するカンピロバクターが食肉加工時に内臓部分へ付着することが難しいと考えられているからです。県はレバ刺しの提供を停止することを飲食店へ指導しています。
食中毒の予防と対処方法
最悪の場合、死者が出ることもある食中毒にかからないようにする方法と万が一食中毒にかかってしまった場合の対処方法を紹介します。
食中毒の予防方法
食中毒の予防には3原則があります。1つ目は「清潔」で生の食材を触った後は手を洗ってから次の調理工程に移りましょう。2つ目は「迅速」で冷蔵庫から出してからすぐに調理し常温で長時間放置する前に食べましょう。3つ目は「加熱または冷却」で肉など生で食べることができない食材は中心まで火を通し、余った食材は冷蔵庫に入れて保存しましょう。冷蔵庫ではほとんどの細菌は繁殖することができませんが冷蔵庫の開け閉めなどで温度が上がったり多く詰め込んだりすると温度が上がることがあります。冷蔵庫に入れても開封している食材はできるだけ早く消費してください。
食中毒は菌やウイルスの付着した食べ物を食べるだけでなく、患者からの排泄物や調理器具などからも2次感染することもあります。食中毒を起こす細菌は消毒用アルコールやせっけん・次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒するほか、食材の中心まで75℃の温度で1分以上加熱することによって死滅することができます。
食中毒の対処方法
食中毒になると下痢・嘔吐・発熱などの症状が出ます。下痢や嘔吐として体外へ排出することは体が毒を排出しようとしているため、自己判断で下痢止めなどは飲まない方がよいです。自宅でできる対処方法は以下の通りです。
脱水症状を防ぐために水分をとる(常温もしくはぬるめ)
無理のない範囲で消化の良い食事を摂る
嘔吐物が詰まらないように横向きに寝かせる
食中毒の応急処置を続けても体調が良くならない場合はすぐに病院にかかることをおすすめします。特に免疫力がない子供・お年寄り・妊婦の場合は早めに受診しましょう。病院では原因物質の特定し抗生物質を処方するほか、脱水症状の対策として点滴を打つことが行われます。
レバ刺しの代わりに
牛肉や豚肉のレバ刺しは食べると危険で禁止されていますので食べることはできません。そこでレバ刺しと似たような味や食感を持つ食材を紹介します。
馬肉のレバ刺し
馬肉は日本国内で唯一の生で食べることができる食用肉です。馬は牛や豚よりも体温が高く、体内で大腸菌を繁殖することができないため生で食べても安全とされています。さらに厳しい食品衛生管理の元、冷凍や真空パックされています。よって馬のレバーも問題なく刺身として生で食べることができます。プルンとなめらかな食感の牛のレバ刺しに対し馬のレバ刺しはプリプリやコリコリとした歯ごたえを楽しめます。
1頭の馬からレバーは600g程度しかとることができない上、牛のレバ刺しの代用品としての人気が高まっているため馬肉専門店でも少量しか提供できない希少な食材です。そんな希少な馬肉のレバ刺しを確実に食べる方法は通販でお取り寄せすることです。通販で注文したレバ刺しは冷凍された状態で届きますので食べるときまで冷凍庫で保管しておくことができます。解凍方法も真空パックのまま氷水に5分漬けておくだけですぐに美味しいレバ刺しを食べられます。おすすめの食べ方は牛肉のレバ刺しと同様にネギや白ごまを上に散らして塩とゴマ油を付ける方法です。
低温調理するという手は?
厚生労働省の公式HPには肉に75℃で1分以上、もしくは63℃で30分以上火を通す必要があるとされています。そこで63℃で30分以上火を通す方法という低温で鶏のレバーを調理するというレシピが多くあります。下処理をしたレバーを真空パックに入れ鍋や炊飯器で温度をキープしながら火を通します。真空と低温調理専用の調理家電も発売されています。
低温調理の鶏レバーはレバ刺しとは異なるものの、フォアグラのようなねっとりとした食感とレバーの風味を楽しむことができるようです。家で安全にレバーを生の状態に近く食べる方法としてネット上で散見されますが近年の情勢を考えると安全性に疑問が残りますのでおすすめはしていません(情報として書かせていただきました)。
合法的にレバ刺しを食べるなら馬肉を
牛肉のレバ刺しは食中毒の危険性から禁止されて食べることができません。牛・豚・鶏の肉は生で食べる食中毒になる可能性があります。日本で生食での危険性が低いのが馬肉です。通常の肉だけでなくレバーを含めた内臓も生で食べることができるのでレバ刺しを合法的に食べたい方におすすめします。熊本の通販ではレバ刺しの中でも特に希少な熊本生まれ熊本育ちの純国産品も取り扱っていますので少し贅沢なレバ刺しを楽しみたい時にご利用ください。