馬刺しはレバ刺しをはじめとしてさまざまな部位を生で食べられるお肉です。魚とも焼肉ともつかない独特の触感と濃厚な味わいは好きな方も多いことでしょう。安全に生食できるため牛や豚の代わりに食べることもあるかもしれません。
このように通な食べものである馬刺しにおいて大トロがどの部位を指すのか知っていますか?
「大トロといったらマグロでしょう」と思う方もいるかもしれませんが実は馬刺しにも大トロと呼ばれる部分があるのです。たてがみやハツといった特殊な部位は知っていても馬刺しの大トロはあまり有名ではありません。
本記事ではそういった知られざる馬刺しの大トロについてどのような栄養素があるのかご紹介していきます。一般的な大トロは脂身が多くカロリーも高い印象がありますが、低脂質高たんぱくでダイエット向きと呼ばれる馬刺しは果たしてどうなのでしょうか。ぜひともこの記事を参考にして健康的に馬刺しを楽しんでください。
馬刺しの大トロって何?栄養素・カロリーは?
まずは馬刺しの大トロとはいったいどの部位なのかとその栄養素とカロリーについてご紹介していきましょう。
馬刺しの大トロはどこの部位?
結論から申しますと馬刺しの大トロは三角バラ・バラオビの部分を指します。どちらも馬のバラ肉のことであばら骨の周囲やお腹あたりの部分です。バラ肉ではあっても名前がつくほどに希少価値が高く1頭の馬から20~30キロほどしかとれないといいます。そのぶんお値段も少し高めです。
つまり馬刺しの大トロについて具体的な部位の規定はありませんが脂がのっているバラ肉のうち最上のものを大トロと表記するのです。その名のとおり口のなかでトロっととろけるような口当たりを感じる大トロは馬刺しにおいても高級な品といえるでしょう。
馬刺しはダイエット向き
馬刺しは広く知られているように非常にダイエット向きの食材です。ここまで高タンパク低脂質・低カロリーを兼ね備えたお肉はなかなかありません。鶏肉もダイエット食品としては有名ですがタンパク質は馬肉より少なく脂質は多いため実際は馬肉のほうがダイエットに向いていると考えられるでしょう。
鉄分・ビタミンが豊富
さらに馬刺しは三大栄養素に加えて鉄分・ビタミンも豊富です。どちらも体を構成するのには欠かせない栄養素であるため馬刺しの栄養価はかなり高いことがわかるでしょう。
馬刺し(赤肉)100gに含まれる鉄分は4.3mgです。同量の豚肉や鶏肉と比べると4倍以上もの差があります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によれば男性は6.5~8mg、女性は5.5~10.5mgの摂取がすすめられています。馬刺し100gは大体一食ぶんであるためそれで1日の半分以上の鉄分を補えるのです。
ビタミンのなかでもとくに馬刺しに豊富なのはビタミンB12という栄養素となります。一日の推定必要量は2.4㎍ですが馬刺しには7.1㎍も含まれています。ビタミンB12は悪性な貧血や脳からの指令を伝える神経系に作用して体を正常に保つ役割があるのです。とりすぎてしまっても体に悪影響を与えることはないため過剰摂取になる可能性は非常に低いといえるでしょう。
大トロの脂は良質
低カロリーで健康的な馬刺しですが「馬刺しの大トロは脂が多いので体に悪いのでは」と疑問に思った方もいるでしょう。たしかに霜降りでサシがきれいに入った大トロはおいしさのぶんだけ脂質があるのは事実です。しかし大トロの脂は良質で体によいことがわかっています。みなさんも馬刺しの脂はほかのお肉に比べ口のなかでとろけやすくあっさりしていて胃もたれしにくいと感じたことはありませんか?
実はその秘密は脂の質にあったのです。
基本的に脂質は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸にわけられます。前者はアイスクリームや牛脂に含まれ一般的に過剰摂取になりがちな身体に良くないことも多い脂です。後者は魚のDHAやオリーブオイルに代表されるような身体によい脂で特徴として低い温度で溶け出すことがあげられます。
馬肉の大トロはその不飽和脂肪酸を半分以上含んでいるのです。皆さんが口のなかに入れたときにお肉がとろけるように感じるのはこの脂が口内の温度で溶けだしているからとなります。馬肉はその脂さえも体によいのです。
αリノレン酸が豊富な馬刺しですが、αリノレン酸は必要に応じて体内でDHAやEPAに変換される働きがあります。
ビタミンA・ビタミンE・カルシウムなども多く含まれています。
大トロのカロリー
良質な脂を含んでいる大トロですが残念ながら脂質は脂質です。ほかの部位に比べカロリーは高くなっているのではないかと思う方も多いでしょう。しかし馬刺し100g一食ぶんのカロリーは110kcalです。ダイエットの代名詞として有名なサラダチキンとほぼ同程度のカロリーとなっています。
加えて馬以外のお肉は生で調理するのが難しいという事実があります。いくらカロリーが低くてもたいていのお肉は火を通さないことには食べられません。一方で馬肉は基本的に馬刺しとして食べられることがほとんどで調理の際にカロリーが増えることはほぼないといえるでしょう。
このように馬刺しの大トロは少し脂質が多いことをふまえても200kcal近くあるうえ料理が必要な牛肉に比べればヘルシーであることには間違いないといえるでしょう。
大トロの栄養素がもつ効果
非常に多くの栄養素が含まれ健康によいことが明らかになった馬刺しの大トロですが、実際には体にどのような効果をもたらすのでしょうか。さきほど紹介した栄養素をもとに詳しく解説していきましょう。
馬刺しに多く含まれるタンパク質はダイエットの効果を高めるはたらきがあります。ダイエット中は食事制限を行うためどうしても栄養不足になりがちです。栄養不足で筋肉量が減ると基礎代謝が落ちてしまい次第に痩せにくい体になってしまいます。タンパク質は体の筋肉をつくる三大栄養素のひとつです。ダイエット中こそタンパク質をしっかりとることで代謝が落ちず燃えやすい体を作れるのです。
また馬刺しにはカリウムという栄養素も含まれています。これには体内の水分量や塩分量を調整する役割があるためにむくみを予防したり解消したりする効果が期待できることでしょう。
月経によって定期的に一定量の血液が排出される女性は鉄分の摂取が欠かせません。女性は普段約5.5mg~7mgの鉄分が必要ですが、月経の際には約10.5mgまで必要量が増えてしまいます。そういったときに馬刺しはもってこいの食べものといえるでしょう。
女性の鉄分不足を解消するためにレバーは貧血予防になるとしてよく知られています。しかしレバーのクセのある風味や加熱後のパサパサした触感が苦手だという方も多いのではないでしょうか。体によいとはわかっていても積極的に食べられない食材のひとつかもしれません。
そういった方には一度馬刺しを食べてみることをおすすめします。濃厚な味わいにとろけるような舌ざわり、噛み応えのある触感のとりこになってしまうかもしれません。馬のレバ刺しは生でも食べられるので加熱したレバーが苦手でも食べられる人は多くいます。貧血予防として馬刺しにチャレンジしてみるのもよいことでしょう。
馬刺しの大トロにのった脂はさきほど紹介したように半分以上が体によい不飽和脂肪酸でできています。不飽和脂肪酸の多くは体内で生成できないため必須脂肪酸と呼ばれ食事でしか摂取できません。バランスのよい食生活には適度に良質な脂をとることも大切です。
具体的な不飽和脂肪酸のはたらきは血中中性脂肪を下げることや脳細胞の活動を支えるDHAの生成を促進させることに期待が持てます。脂肪というと摂取すると血液がドロドロになってしまうイメージがあるかもしれませんがやはり重要なのはその量と質です。馬刺しの大トロに含まれる脂は体を支えるのに大切な栄養素といえるでしょう。
大トロの栄養素を最大限に生かす食べ方
ここまで馬刺しの大トロにどれほど栄養素が詰まっているかをご紹介していきましたがその食べ方で栄養素が活きるかは大きく変わっていきます。せっかくの栄養素を無駄にしてしまうのはもったいないことでしょう。以下からは大トロの栄養素を活かしきるための食べ方を詳しくご紹介していきます。最適な食べ方で馬刺しの大トロからしっかり栄養を取っていきましょう。
生で食べる
馬肉のカロリーを抑えるには生で食べることが大切です。ほかのお肉と比べて生でも安全に食べられる馬肉は生食するだけでもカロリーが抑えられます。たとえばステーキにするだけでも油は使うでしょう。脂質のカロリーは1g約9kcalカロリーあります。
そのため少し焼くだけでもぐんとカロリーが増えてしまうのです。ただでさえ脂質が多めの馬刺しの大トロは生でいただくのがヘルシーでしょう。カロリーを抜きにしてもとろける甘みが特徴的な大トロは生がおいしいため生食をおすすめします。
大豆製品と一緒に食べる
馬刺しのタンパク質を最大限に吸収するには大豆製品を一緒にとることが重要です。タンパク質というのは20種類のアミノ酸が組み合わさってできたものでその配列はさまざまとなっています。20種類のうち9種類は必須アミノ酸と呼ばれており体内で生成できません。
栄養学において「アミノ酸の桶の理論」という必須アミノ酸の摂取量を縦棒グラフにしてそれを桶に見立てたものがあります。桶のなかに水を入れるときにひとつでも棒グラフが低ければ水はほとんど溜まらないことがわかるでしょうか。それと同じで必須アミノ酸は1種類でも欠けていると体内にタンパク質がほとんど吸収されなくなってしまいます。豆腐・納豆などの大豆製品は植物性タンパク質の代表格です。馬刺しは大豆製品と一緒に食べることで必須アミノ酸がまんべんなく吸収され、そのタンパク質をしっかりとり入れられるのです。
鉄分を多く含む野菜と一緒に食べる
実は鉄分には野菜に多く含まれる非ヘム鉄と肉に多く含まれるヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄は非ヘム鉄の数倍の吸収率を誇っており馬刺しの鉄分もヘム鉄です。さらに2種類の鉄分は同時に摂取すると相乗効果で吸収率があがります。鉄分をしっかりとりたいときはぜひ鉄分が多くある小松菜やホウレン草などと一緒に馬刺しを食べてみましょう。
まとめ
本記事では馬刺しの大トロに含まれる栄養素やその効果、最適な食べ方についてご紹介していきました。馬刺しの大トロとはバラのうち最上級のものをさした脂ののった希少な部位のことです。低脂質高タンパクでダイエット向き、鉄分やビタミンを多く含み栄養価は非常に高くなっています。とくにサシが入った馬刺しの大トロは良質な脂がたっぷりで不飽和脂肪酸は馬刺しのなかでも特徴的な栄養素といえるでしょう。
そういった栄養価の高い馬刺しの大トロはダイエットに適しているだけでなくその効果を高め、鉄分が不足してしまいがちな女性の味方です。本記事を読んで馬刺しの大トロがいかに栄養価の高い食材かご理解いただけたことでしょう。最近たるんでいる気がするあなたや貧血気味なあなたも馬刺しの大トロを食べて健康的な生活への第一歩を踏み出してみましょう。