桜肉、一度は居酒屋のメニューで「桜肉のユッケ」などを目にしたことがありますか?
名前の通り、桜のようなきれいな色をした肉でその味わいはお口でとろける一方で、肉自体は低カロリーでヘルシーなもの、そのお肉の正体は馬肉です。馬肉といえば、九州の熊本馬刺しが有名ですよね。そんな馬肉ですが、なぜ九州で有名なのでしょうか?なぜ「桜肉」や「さくら」といわれているのでしょうか?今回はその馬肉についての歴史や名前の語源についてお伝えしていきたいと思います。
桜肉の歴史とその語源
まずは馬肉の歴史について簡単にお伝えしたいと思います。
もともと馬肉・馬刺しを食べる文化が広まったのは、豊臣秀吉の時代にまでさかのぼり、文禄・慶長の役に朝鮮出兵で肥後熊本半初代藩主の加藤清正にルーツがあるという説が有力とされています。
当時、朝鮮出兵で大陸に渡った際に現地で食料が底を尽き、やむを得ず軍馬を食料にしたことが発端とされ、帰国後も加藤清正らは領地の熊本で好んで馬刺しを食べていたことから、熊本にて馬刺し文化が広まっていったとされます。現に馬肉の生産地域で一番の都道府県は熊本県となっており、歴史的背景が影響しているといえます。
ちなみにですが、九州熊本馬刺しの他、日本には東北地方の会津馬刺し等も有名ではあり、東北地方は馬刺しの赤身文化、対して熊本馬刺しは赤身に霜降りと幅広い馬肉の部位を食べる文化があるとされているため、綺麗な脂が入った霜降りの馬刺しをいただくのであれば熊本馬刺しがおすすめとされています。
ではなぜ馬肉が「桜肉」または「さくら」と呼ばれるようになったのでしょうか?
その理由についてはいくつかの興味深い諸説がありますので、ご紹介させていただきます。
もともと日本では普通に肉を食べることがありましたが、時代によっては肉食自体が禁止になることもありました。記録では西暦675年の天武天皇の時代において肉食の禁止令が初めてだされ、牛・馬・鳥・豚そして猿までも食べてはいけないと記されていたそうです。猿が禁止とは、当時の日本では猿を食べることもあったのでしょうね。
そして、歴史が進むにつれ江戸時代が最も肉食の禁止令が強められた年代ともいわれおり、人々が肉を口にすることが難しくなったそうです。
しかしながら、禁止令の出されている中、人々は肉を食べたい食欲には逆らえず、肉名を隠語にして食べていたそうです。
例えば、イノシシ肉を牡丹(ボタン)、鹿肉を紅葉(モミジ)そして馬肉を桜(サクラ)と呼んでおり、幕府の目を盗み、肉名を隠語にして食欲を満たしていたようです。その名残から桜肉と呼ばれるようになった説があります。隠語説も実に興味深いですね。
馬は草や穀物を食べて育ちます。そのため、水分の多い青い牧草を食べるのは必然的に夏場になります。対して、干し草や穀類を食べて過ごす秋と冬を越した馬は、桜が咲く春の季節には脂がのっていておいしいといわれており、季節によって異なる草を食べることが肉質に関与した説があります。食べるものによって肉質が変わることは理に適っており、まちがいとも言えませんよね。
もともと馬肉には豊富な鉄分が含まれております。その量は牛肉の約1.5倍、豚肉の約3.5倍と圧倒的な栄養素の含有量です。その成分のヘモグロビンが空気と反応することで、鮮やかな桜色になり、その切り身を並べることで桜の花を連想させることも理由の一つとなっており、それに加えて鍋で煮込んだ馬肉が桜色になるという理由からも桜肉と言われている説があります。化学的な要素を含んだ裏付けにも納得ですよね。
千葉県の佐倉(さくら)という地域は今も昔の城下町の面影を残している地域であります。江戸時代には佐倉藩十一万石として栄えた歴史ある城下町であり、2016年には日本遺産に指定されています。この佐倉の地はかつて幕府の牧場があったことから「馬」といえば「佐倉」と言われるようになり、地名を引用した説もあります。またこの地域は佐倉藩主の堀田正睦が蘭学を推奨したことからオランダとの関わりが深く、蘭学の先進地として「西の長崎・東の佐倉」と並び称されたこともあり、今はオランダとの結びつきもあり72万本のチューリップが咲き誇るチューリップフェスタが開催される地域でもあります。今はチューリップで有名な佐倉市ですが、馬肉との関係も興味深いですね。
露天商などで客を装って商品を褒めたりする人を「さくら=偽客」と隠語で呼ばれていますが、明治時代、牛鍋が流行った際に効果な牛肉の偽客として馬肉が使われたことから、その馬肉をさくらと呼ぶようになった説もあります。食品偽造説、そうではないことを願ってしまいますね。
まとめ
皆さんはどの語源説が本当の由来だと思われますか?現状、どの語源説が正しいものであるとは言い切れていません。
そんなミステリアスな馬肉ですが、牛肉・豚肉などにも比べ非常に高い栄養素を含んでおり、その美味しさからも老若男女問わず人気のある肉で、その語源のミステリアスさからもより興味を湧きたてられる特別な存在であると思います。
この記事を読んでいただき、馬刺しを食べてみたいと思った方はスーパーやお店で馬肉を購入できなくとも、様々な商品のラインナップが揃った通販サイトをご利用いただくことで新鮮で安全な馬刺しをご自宅にお届けすることもできますので、食卓で馬刺しを囲み、語源のミステリーを追求しながらお楽しみいただいてはいかがでしょうか?
今回は桜肉の語源についての記事をご覧いただきありがとうございます。